絵の修行が目的でオーストラリアへ一人旅をしにきたので、僕は毎日ケアンズの大きな公園ラグーンで絵を描いていた。
ラグーンは海の前にある大きな公園だ。
芝生もプールもあるので、ここはケアンズ市民の憩いの場となっている。
この公園で僕は毎日英語の勉強や絵の修行をしていた。
当時の僕は全くと言っていいほど英語を話す事ができなかったが、絵を描いていると様々な国の人やケアンズに住んでいる人達が話しかけてきてくれた。
その中でも最もお世話になったケアンズ在住のジャッキーとオノと言う夫婦だった。
彼らも僕が絵を描いている最中に話しかけてきてくれた。
絵の修行の旅をしている事や、英語が全く話せなくて宿に泊まるのに一苦労した話を片言の英語で必死に説明した。
この頃は英語の発音も未熟で通じているのか通じていないのか僕もわかっていなかったがジャッキーとオノはずっと笑顔で僕の話を聞いてくれた。
すると突然ジャッキーが娘達に紹介したいからと言って今日の夜一緒にディナーでもどうか?と誘ってくれたので、僕はこの頃まで外国に来て外国人とあまり深く関わってこなかったが、この夫婦は何故か安心感があり即答で行くと答えた。
ジャッキーとオノの家につくとディナーをごちそうになった。
オノがギターを引いてやると言って何のジャンルなのかもわからない下手くそなギターの演奏を聴きながらお酒が進み、気持ちよくなってしまった。
初めて出会う外国の人と話もまともにできない僕に、こんなに親切にしてくれる人もいるんだな、とほろ酔い気分で考えていると、なんだか安堵感と安心感の両方が混じり合ったよくわからない気分になっていった。
居心地がいい・・・
そんな事を考えているとジャッキーが今日からケアンズを出るまで家に泊まりなさいと言ってくれた。
こんな事が日本であるだろうか?
僕は居心地の良さとジャッキーとオノの優しさに甘える事にした。
外国の人との初めての深い交流だった。
ケアンズは知らない人でもすれ違う時
「Hi」
と軽く挨拶をするような治安の良い場所で、優しい人が多い場所だと感じる事もできるし居心地も申し分ない。
僕はいつの間にかケアンズが好きになっていた。
この後、ここケアンズで思いもよらない出会いがきっかけで一番最初の絵の仕事を得る事になる。
この仕事から海外での仕事の取り方を学ぶようになるとは想像もしてもいなかった。