美女が多い国スロバキアからハンガリーへ向かう。

 

焦げるような太陽の下、ほのかに香る雑草の上で僕は何度も何度も飛び跳ねていた。

 

スロバキアの文化遺産であるスピシュ城をバックに三脚に一眼レフをセットして一人で写真を撮っていたのだが、面白みのある写真が撮りたくなり、空から城に向かって降ってくるような自分の姿を撮影する事にした。

 

ピーピーピーッカシャ!

 

シャッターが切れる瞬間にジャンプをする。

 

一眼レフは少しの間隔をあけながら連続でシャッターを切るように10連写自動設定にしている。

 

これを何度も繰り返している内に汗だくになりながらも満足いく写真が数枚撮れたので、ようやくスピシュ城に別れを告げる事にした。

 

 

その光景を10メートル後方で見ていた2人の婦人が僕にむかって拍手をしながらビューティフォーと笑顔で言う。

 

広い草原の中1人で必死にジャンプしている姿に興味を持ち、最後まで見届けていたようだ。

 

そんな自分の姿を想像するとやけに恥ずかしくなり、僕は婦人2人にセンキューとお礼を言い、そそくさとその場を離れた。

 

 

丘の上の廃墟のスピシュ城を訪れる目的も達成した僕は次の旅の事を考えていた。

 

次に行く国はハンガリー。

 

そしてその後はオーストリアへ向かい、ドイツに再び戻る計画を頭の中でぼんやりと構想する。

 

 

どう行くのかはまだ決めていないが、とりあえずレボチャに戻ってどの行き方がいいのか街のインフォメーションセンターで情報収集する事にした。

 

 

僕のポリシーとして次に訪れる街の情報は、調べないよにしている。

 

その方がワクワク感が増すし、地元の人に尋ねる事で思いがけない情報を得たり、良い出会いがあるからである。

 

しかし、その場所までの行き方は、先に調べておくようにしている。

 

なぜなら、その目的地までの道順で驚くほど料金が変わってくる場合があるからだ。

 

 

レボチャ行きのバス停に到着し、まだ時間があったので音楽を聞きながら、バス停のベンチの影で汗だくのTシャツの胸元をつかみながらパタパタと冷たい風を中に送り込み、熱くなった体を冷やしていた。

 

 

となりには3人の地元の女性が何やら話しており、チラチラと僕の方を見ているのが視界の片隅で見える。

 

スロバキアの田舎街に来てから、やたらと人の視線を感じるようになった。

 

 

アジア人を一人も見なかったので、彼らからすれば黒髪で黒い目、低い鼻ののっぺらとした顔を持つ人間が珍しいのだろう。

 

視界の角にいた女性3人が徐々に僕の目の前に現れ、何気なく見上げると何やら僕に話かけている。

 

僕がイヤホンを耳から外すと同時に、その内の一人が英語で話しかけてきた。

 

「どこからきたの?何人?」

 

「日本人ですよ」

 

目の色がブラウンに輝き、スラッとした足を交差させ、髪をかき上げながら続けて言った。

 

「日本人始めて見た!クールだね!」

 

昨日レボチャに到着した時も2人のスロバキアの美女に誘われたが、今日も女性に声をかけられた。

 

どうなっているのだこの国は。

 

 

見ず知らずの外国人美女が2日続けて話しかけてくるなんて事は、僕の人生の中で1度たりともなかったのに・・・

 

スロバキア人は日本人が好きなのだろうか?

 

この国に住めばモテモテ人生を歩めるのではないか?

 

そんな事を考えていたためか、冷えはじめていた体に再び熱がこもってきた。

 

スタイルは抜群で、顔も美しく、その全体の雰囲気からフェロモンのようなものも出ている。

 

一体何歳なのだろうか?

 

そんな疑問を持ったので彼女に尋ねてみた。

 

「今何歳なの?」

 

彼女は言った。

 

「16歳!」

 

僕の想像を遥かに下回る年齢だった。

 

見た目は最低でも23歳程度に見える。

 

「大人っぽいね〜!」

 

そう言うと彼女は腰をクネらせダンスを始めた。

 

意味不明ではあったが、恐らくこっちの人は、嬉しければすぐに踊る習慣でもあるのだろう。

 

そんな彼女達と話をしているとバスが到着した。

 

最後に記念撮影させてもらい、彼女らと一緒にバスに乗り込みレボチャへと向う。

 

どうやら彼女達はレボチャで生まれ育ったようだ。

 

 

15分程度でレボチャに到着し、スロバキアの美女達とお別れし、僕はすぐにスロバキアに向う準備をした。

 

荷物は昨日泊まっていた宿に起きっぱなしにしていたので一旦宿に戻り、荷物をまとめて、すぐにインフォメーションセンターに向う。

 

最後のレボチャとなるのでその道中で、一眼レフで写真に収めていた。

 

子供を被写体に合わせると必ずカッコイイポーズをしてくれるが、大人はどうなのだろう?

 

そう思い何気なくは走っていた車にレンズを向けた。

 

すると子供と同じようにポーズをとってくれる。

 

スロバキアのこういった所に平和を感じる。

 

最初はスピシュ城目的で来ただけだったので2日しか滞在しなかったスロバキアだが、またいつか戻ってきたいと思わせる程のものがあった。

 

しかし、僕は新しい旅にでなければならない。

 

新しい土地にいけばそこからまた新しい絵のインスピレーションを得る事ができるからであり、絵を生業としているためその感覚を得る事は必須なのだ。

 

 

大好きになったスロバキアを出発するために僕はインフォメーションセンターへと向うのであった。

 

 

 

 

PS.

次はスロバキアからハンガリーまでの旅の話をするが、かなりキツい旅路になってしまった。

 

その旅路の途中で野宿をせざる終えない状況に陥ってしまったのだが、その時に日本では絶対にありえないものの姿を目の当たりにした。

 

それでは次回をお楽しみに。