外国人が必ず驚く日本人の不思議な話

「めちゃくちゃハードだったぜメ〜ン」

 

フィリックスは幸福感を堪能してるかのようなリラックスした表情をうかべながら瓶ビール片手に僕の質問にそう答えた。

フィリックスとの出会いは僕がまだまだ画家として生活できずにいた時代に画家として生きる方法を探すため、オーストラリアへ修行の旅に出たのだが、オーストラリアの東の海岸線沿いにあるバイロンベイという小さな町のアーツファクトリーという世界中から芸術家が集まる宿で出会った。

当時の僕はまだまだ英語を話す事ができず、外国人とコミュニケーションも満足に取る事が出来なかったが、そんな中でもフィリックスは積極的に僕に毎日話しかけてきてくれる心の優しい奴だ。

 

 

その後、オーストラリアの旅で「絵があれば生きていける」と確信を得た僕は巨大キャンパスと絵具道具を持って世界中を旅する事にし、ドイツを訪れる事をSNSで報告するとフィリックスから「家に泊まりにおいでよ!」っと連絡が入り、今こうして一緒にミュンヘンの自然豊かな公園内にある昼間から空いているBARのテラス席で一緒にお酒を飲んでいる。

フィリックスの中では「英語の話せない日本人がドイツに遊びにくる」っという認識だったようだが、今ではお酒を飲みながら外国人は大人びていて何歳かわからないだとか、同じ髪型で大きなメガネをかけている集団がいたら韓国人旅行者だとか、どれくらいの期間海外を回る予定なのかなど、他愛もない会話を長時間出来るようになっていた。

 

 

美人店員に新しいビールを注文すると同時に残りのビールを一気に飲み干したあとフィリックスは言った。

 

「本当に意思疎通ができるようになって驚いたよ。オーストラリアの時とは全然違うしZiNは努力家だったんだね〜。日本人と何人か知り合ったけどずっと連絡とってるのZiNだけだよ」

 

 

 

美人店員に「僕ももう一本ビール」と注文してビールを一気に飲み干したあと僕も答えた。

 

「日本人は英語を話せない事をコンプレックスに思っている人も沢山いるし、難しくて途中で学ぶ事をやめてしまう人も沢山いるよ。僕はこれからの画家活動で必要だったし、英語を話せるようになる事に強い憧れがあったから勉強し続けてこれただけだけどね」

 

 

 

続け様に以前から気になっていた質問をフィリックスに投げかけてみた。

 

「日本人の英語ってどうなの?」

 

 

 

するとフィリックスから予想していた通りの答えが返って来た。

 

「まぁ人によるけど、正直何言ってるかわからない事の方が多かったから一つの単語を拾ってそこから”だいたいこんな感じの事を言っている”と予想しながら話している事の方が多かったかな〜」

 

 

 

 

さっき注文したキンキンに冷えた新しい瓶ビールが運ばれて来たので改めて僕たちは乾杯した。

 

「日本って学校で英語の勉強とかはしないの?」

 

ビールを飲む直前にフィリックスが質問してきた。

 

毎回この質問に対する返答で、日本人の不思議な事実を教えると必ず外国人は驚く事になる。

 

「するよ!するする!日本の学校では中学校から高校まで6年間英語の勉強してるよ」

 

 

 

ビールを飲む手が止まり、フィリックスは眉間にシワを寄せながらこちらを凝視している。

 

「・・・6年???6年も勉強するのに何で話せないの!?」

 

日本の学校での英語の授業はほとんど意味がない事や、日本人は英語が話せなくても生きていけるから英語を学ぶ必要がないと思っている人が多い事を話をした後にようやく僕もフィリックスもビールを喉に流し込む事が出来た。

 

 

 

自然に囲まれた場所で昼間から飲むビールは格別に美味しく感じ、もう一人の自分がふわふわと空中を漂う感覚になり、ほんのりと酔い始めているのが自分でもわかる。

 

フィリックスも青い瞳を半分だけ覗かせながらぼんやりと視界の奥の草原を眺めている。

以前から気になっていた事をフィリックスに投げかけてみた。

 

「オーストラリアで出会った時、僕の英語どう思った?」

 

 

フィリックスは自然の合間を駆け抜ける風を感じながら、オーストラリアの旅を思い出すように上を見上げ、僕に一言こう言った。

 

「めちゃくちゃハードだったぜメ〜ン」

 

 

 

 

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