外国人の友達との別れの挨拶は日本語でしてしまう理由。
目が覚めてからどれくらいたっただろう。 ただただ目の前の何もない空間にぼんやり焦点を合わせながら何を考えるでもなく、僕はベッドの上で横になっていた。 向かいの部屋からはバタバタとフィリックスが仕事に出かける支度をする慌ただしい物音が聞こえてくる。 昨日は朝から晩まで1日中フィリックスと飲み歩き、自宅に帰ってからも夜中の3時まで飲んでいたが、フ […]
目が覚めてからどれくらいたっただろう。 ただただ目の前の何もない空間にぼんやり焦点を合わせながら何を考えるでもなく、僕はベッドの上で横になっていた。 向かいの部屋からはバタバタとフィリックスが仕事に出かける支度をする慌ただしい物音が聞こえてくる。 昨日は朝から晩まで1日中フィリックスと飲み歩き、自宅に帰ってからも夜中の3時まで飲んでいたが、フ […]
「めちゃくちゃハードだったぜメ〜ン」 フィリックスは幸福感を堪能してるかのようなリラックスした表情をうかべながら瓶ビール片手に僕の質問にそう答えた。 フィリックスとの出会いは僕がまだまだ画家として生活できずにいた時代に画家として生きる方法を探すため、オーストラリアへ修行の旅に出たのだが、オーストラリアの東の海岸線沿いにあるバイロンベイという小さな町のアーツファクトリーという世界中から […]
スイッチを入れたかのように突然目が覚め、体の細胞もいつもよりハッキリと活動しているのがわかる。 眠りから目覚めの中間にあるボヤっとした感覚もなく、いつもよりも体を楽に起こす事が出来た。 白いレースのカーテンを挟んで朝日が柔らかく差し込み、僕が眠るダブルベットを優しく照らしている。 昨日はドイツ人の友人であるフィリックスとミュンヘンの街を1日か […]
「凄いもの見してあげようか?」 フィリックスは自身満々の笑みを浮かべていた。 「見せて欲しい」と言う事が最初から決まっているかのような表情で僕の返答を待っている。 <いや、いいわ>っと意地悪しようか迷ったが実際、その”凄いもの”が何なのか気になったのでここは素直に彼の質問にイエスと答える事にした。 「うん! […]
「ZiNこれカッコイイだろ!」 洗面所で歯磨きをしていると鏡越しに上半身裸のフィリックスが首に銀のネックレスをつけて「自慢のネックレスを見てくれ!」と言わんばかりの自身満々の顔で話しかけてきた。 よく見ると漢字で”羊”と一文字だけ書かれたシンプルなデザインだ。 「カッコイイだろ!ZiNが来る少し前に買ったんだ!」 「・ […]
体の内部をドンドンという重低音が走り抜ける。 中央のステージで演奏するアーティストの名前を叫ぶ人や大きく頭を上下に揺らしながら狂喜乱舞する人々・・・ 人の頭が波のようにうねる景色に囲まれながら僕は遠のく意識とここで倒れたら危険だという危機感と必死に戦っていた。 事の発端は昨晩のフィリックスの一言だった・・・ 「ZiN明日ドイツで有名なミュージシャンのラ […]
ミュンヘンのマリエン広場の入り口付近にある女性像の右乳に手をあてながらフィリックスが言った。 「右乳だけ色変わってるだろ?これ皆が触るからだよ!」 「何で触るの?」 「右乳を触ると願いが叶うと言われているんだ!俺も何回も触ってるよ」 そう言いながらフィリックスは女性像の右乳をなでるように触っている。 「それでフィリックスの願いは […]
雲一つない空の上を太陽が少しづつ登る。 建物の影と入れ替わるように太陽の光が街を覆い尽くしていく。 時間が経つにつれてスーツを着こなしたサラリーマンが駅に向かって歩く姿が多くなってきた。 ブランド物なのかどうか僕には一目で判断はできないのだが、外国人がスーツを着ると様になり、例えそれが安っぽい生地のスーツでも僕の目からすれば高級に見えてしまう。   […]
澄んだ朝の空気を肌で感じる。 僕はベットの上で仰向けのまま天窓から優しく差し込む光を寝ぼけながらボーッと眺めていた。 それはすりガラス越しにほのかに見えていたが、やがてはピントが合うようになり、意識も段々ハッキリとしてくるのを感じる。 どうやら昨日はドイツビールをたらふく飲んでしまい、いつのまにか窓も閉めずにベットで寝てしまっていたようだ。 […]
「ひと昔前まではパスポートが必要だったけど、今は普通に通えるから便利になったよ」 運転席の窓から肘を突き出し、車内に吹き込む風を感じながらミッチェルが答えた。 オーストリアからドイツのトロストベルクへ向かう道中、国境付近に到着したが、ポスポートを見せる事もなく国境を超えたので僕は尋ねた。 「国境を超えるのに入国審査しないでも大丈夫なの?」 これまでの旅で国 […]