澄んだ朝の空気を肌で感じる。
僕はベットの上で仰向けのまま天窓から優しく差し込む光を寝ぼけながらボーッと眺めていた。
それはすりガラス越しにほのかに見えていたが、やがてはピントが合うようになり、意識も段々ハッキリとしてくるのを感じる。
どうやら昨日はドイツビールをたらふく飲んでしまい、いつのまにか窓も閉めずにベットで寝てしまっていたようだ。
そのまま体を起こすと思ったよりも体が軽く感じ、昨日のお酒は一切体の中に残っていない事を悟り、僕はそのまま一階に降りていった。
一階に降りるとミッチェルが朝食の用意をしながら僕に朝の挨拶を交わす。
「おはよう!よく眠れた?」
「完璧に熟睡できた!
「やっぱり金持ちの家はベットも寝心地がいいな~!」
「ははは!ダマレー!!」
ミッチェルっは今日も朝から日本語の「黙れ」を連発する。
どうやら相当日本語にハマっているようだ。
ミッチェルが朝食の準備をしている間に僕は、庭でコーヒーを飲みながらブログに旅の記録をする事にした。
昨日の出来事を思い出しながら記事を書き込んでいると、目の前にミッチェルの息子のファービーが芝生の上で裸足になり空を見上げていた。
「ファービーおはよう!」
「おはようZiN!何してるの?」
「ブログ書いてるよ。ファービーの事も書いていい?」
「いいよ!何書くの?」
「まだ考えてないけど・・・あ!ファービーに日本語の名前あげようか?」
「どういう事?」
僕はカバンに入っていたiPad miniを取り出し、ファービーに漢字の当て字で名前を書いてあげた。
外国人は本当に漢字が好きで仲良くなった外国人の友人には、日本語漢字で名前を書くようにしている。
この方が僕自身も名前を覚えやすいし、なにより相手がかなり喜んでくれる事を知っているからである。
「すごい!これ僕の名前!?カッコいい!写真撮っていい?」
風称美偉
「ZiNありがとう!これカッコいいね!そのうちこれでタトゥー彫るよ!」
「タトゥーは・・・辞めといた方がいいかな」
別に悪い意味ではないが、適当に当て字で書いただけなのでタトゥーを掘られるのは、少し罪悪感があったのでやんわり引き止めた。
そうこうしている内に朝食が出来上がり、庭にミッチェルがドイツのソーセージとコーヒーを持ってきてくれた。
「さっさとこれ食べて早く凄い大自然みにいくぞ!」
今日はドイツ人も日本人にもあまり知られていないドイツとオーストリアの
観光地に連れていってくれる事になっていた。
ドイツ人も日本人も知らない大自然
後にドイツ人の友人に
「キングスレイクに行ったけど本当に凄かった!」っと話しても
「キングスレイク?どこ?」っと言われるほど
ドイツ人にもあまり知られていない観光地だという事を悟る。
ドイツ人も知らないなら当然日本人にも知られていない場所であり、検索しても日本語ではあまり情報が出てこない。
そんな場所に行けるのも旅の醍醐味である。
画家を目指して世界を旅に出発し、絵で生活する方法を学んだり、英語を勉強してきて本当に良かったと今では心から思っている。
「王の湖」と呼ばれるキングスレイクはドイツ語ではケーニヒスコと呼ばれており、サルツブルクから南にある国境付近の巨大な湖である。
ミッチェルの自宅からキングスレイクまで車で約1時間で到着した。
周りは圧倒される程の高い山々に囲まれ、その間を縫うように巨大な湖が目の前に広がっている。
縦7.7kmもあるので向こう岸に渡るには船にのらなければならない。
ミッチェルがチケットを用意してくれていた。
船に乗り込み、湖の一番端っこの絶景ポイントへと向かう間、船上員がトランペットで演奏してくれる。
その音色は山の向こう側で繰り返し鳴り響き、自然の壮大さをより感じる事ができる。
湖の向こう側に到着し、透き通る綺麗な湖やどこまでも続くような奥行きのある森で写真を撮影しながら自然を満喫していた。
しかし、僕はそこで不可解な写真を撮影してしまった事に後で気づく事となる。
その事について詳しくは次回の旅の記事でお話しするとしよう。
それから2時間ほど自然を満喫し、再び湖の反対側へ戻る途中に昼食をとる事にした。
もちろんドイツの伝統料理である。
そして次はロープウェイで山の頂上を目指す。
この場所でとれた化石の数々。
これだけの素晴らしい景色なのにドイツ人でも知らない人がいる事が本当に不思議で仕方がない。
今まで世界中で大自然の絶景を見てきたが、このキングスレイクは僕の旅の中でトップ10に入るほどの絶景だった。
PS.
今回は写真が多かったので小説風に記事を書くより情報重視で記事を書いてみた。
次回はここで撮影した奇妙な写真の話を詳しく説明する。