まだ僕が画家の仕事をしに世界各国へ旅にでる前の2011年に
小室哲哉さんや中田ヤスタカさんがでるASOBINITEという
大きなイベントでライブペイントをする事になった。
今では僕のスタイルでライブペイントができなければ
こういった依頼は断っているが、この時は絵の技術もなく
ライブペイントすらやった事がなく初めての経験だったので
すぐに参加する事を決意した。
場所は大阪の名村造船所跡地という場所で野外ステージと
室内ステージを行き来できるつくりになっており、
こんな大きなイベントで初ライブペイントをするとなると
少し緊張した。
僕は野外ステージの方でライブペイントをする事になったが
この日は嵐のような大雨だった。
一応、屋根はあるのだが強い横風がふいていたので屋根なんて
あってないようなものだった。
木の板に絵を描く紙を張りつけようとしても湿気で紙が濡れて
ピンと張る事ができない。
しかも雨のせいで絵の具が乾かない。
最悪の状況で初ライブペイントが始まった。
必死に描くが絵の具が乾かないのでいつものタッチが描けない
まま絵を描き進める事にした。
絵を描く事に集中していて気づかなかったが、僕の後ろには
野外ステージを埋め尽くす数のお客さんが盛り上がっていた。
こんなに人がいるのにいつものタッチを出せない状況に
悔しさがこみ上げてきたが、ここは考えてもどうしようもないので、
いつものタッチはやめて油絵のようなタッチで描く事にした。
こんな描き方をするのは初めてだったが、これで一気に
集中力が増すのがわかった。
これを朝までに完成させなければならない。
体は横雨でビショビショにぬれてかなり
寒かったがテキーラを飲み
体を暖めながら作業を続けた。
描いてる最中もお客さんが話かけてきてくれて
この時、数人の絵描きがライブペイントをしていたが
僕の絵が一番エネルギーを感じると言ってくれた。
ライブペイントは生のお客さんの反応や意見をもらえるので
絵の上達に向いてる方法だ。
その事に気づいたのは画家の旅に出た後だったが、とにかく
この時は、ただただ嬉しい気持ちで心が満たされた。
ようやく完成する頃には朝の4時をまわっていて、気づけば
お客さんの数も少なくなっていた。
一応完成したが、僕のタッチではない油絵のような仕上がりに
なってしまったが、初めてのライブペイントでいい経験に
なったので満足して家に返った。
この数ヶ月後に画家として生きる方法を探すため、
絵の修行や絵で収入を得る方法、英語などを学ぶ事となり
様々なスキルを身につける事になる。
今の生活ができるのも、この経験が生かされているのかもしれない。