僕には不思議な能力があるのかもしれない。
その能力が絵を描いて行こうと決断する理由になる。
いつからかは明確ではないが恐らく小学校低学年の物心がついた頃からだったと思う。
夜中に深い眠りにつく時に金縛りの前の感覚になり、いつの間にか見た事もない世界に入って、その世界を飛びまわる夢を見る事があった。
昔からそういった夢を見る事があるので、今では寝る前に意識的にその世界の中に入ろうと念じれば、30パーセント程の確率で自分の世界に入れるようになった。
「この夢は何なんだ?」っとその頃から漠然と思っていたが、あまり気にしていなかった。
しかし年齢を重ねる度に、その世界は色濃くなって広がっていき、見た事もない建物や絶景を
夢の中なのはわかっているが、現実のようなリアルな感覚でみるようになっていった。
しかし友達に話してもあまり相手にされなかった。
「この世界を皆に見せて証明する方法はないのか?」
そんな事を考えていたが自分の夢を他人に見せるなんて事は到底不可能だと思うようになり、そのうち「単なる夢」として誰にも話さないようになっていた。
そのまま成長して高校生になり何も目標もなく、ただただ平凡に暮らしていたが心の奥底で、このまま普通に就職して普通に暮らしていく事に違和感を感じていた。
今思い返してみれば僕には何かをする為に
生まれてきた使命みたいな物があると感じていたのだと思う。
その頃からまた、あの夢を頻繁に見るようになっていき、それに比例して、この世界をどうにかして自分以外の人に見て欲しいという欲求が高まっていった。
夢を写真で撮る事はできないし、話をするだけではただの世間話で終わってしまう。
どうにか自分の世界を表にだす方法はないかと考えていたある日、授業で使うノートの端っこに僕が描いた落書きを見てひらめいた。
僕の世界の夢を絵に描き映せば他の人も見る事ができるのでは?
しかし、その頃は絵に関する知識は全くなかったし、何より僕は絵が下手だった。
このまま描いても、ただの落書きで終わってしまう。
そう思った僕は、その瞬間から絵を描けるようになる為に、大阪の芸術大学に入る事を決意した。
その日、家に帰って親に大阪芸術大学に行きたいと言うと瞬発的に却下された。
それも当然で、今まで絵を描きたいなんて話もした事もないし、ましてやワガママに育った僕がマジメに大学で勉強するとは思えなかったんだろう。
しかし・・・
僕のそのワガママで頑固な性格が功を奏したのか
一度本気で決断した事は絶対に諦める事はできない、
という思いが日に日に強くなっていき、高校卒業後はとりあえず就職して、お金を貯めて大学へ行こうと決意する事になる。
ここから地獄の日々が続くとは夢にも思っていなかった。
第二話:僕の生きてきた道筋