画家にとって必要なものは「刺激」である。
僕はこれまで世界各国を旅しながら絵を描いてきたのだが、まさかチェコでここまで刺激を頂けるとは思ってもいなかった・・・
今回僕が向かったのはチェコの首都であるプラハから約70km離れた場所にあるセドレツ納骨堂・・・
そこは人骨教会とも呼ばれており、4万人の人骨が納骨されているという。
そしてその内1万人分の骨を使って建てられた納骨堂があるらしい。
プラハからバスを利用して人骨教会があるクトナーホラという街へ向かう事にしたのだが、どうやって行くのかバス停で調べていたら多くのチェコ人が恐らくチェコ語で「どこ行きたいの?」っと訪ねてきてくれた。
セドレツ納骨堂を地図で指さしながら「ここに行きたい!!」っと言うと、彼らは「あのバスに乗ればつくよ!」っと親切に教えてくれた。
チェコ人の優しさは何だか日本人に近いような感じがしてかなり親近感が持てた。
っというわけで無事にバスに乗り込みクトナーホラに向かう事に。
バスから見る景色が都会の街並みから永遠に続いているような草原に変わっていく。
どうやらクトナーホラは田舎の街のようだ。
バスに揺られる事1時間半。
ようやく到着し、僕はすぐにセドレツ納骨堂へと足を運んだ。
ワクワクが止まらない。
やはり世界の旅は日本では味わえないようなワクワクや興奮、刺激を得る事ができるのでやめられない。
バス停から約10分歩くと少しずつ納骨堂がみえてきた。
これが噂に聞いた人骨教会か・・・
周りは墓地に囲まれており、その中心に納骨堂が建てられており、何だか異様な空気感が漂っているのがわかる。
入場料は90コロナ(約400円弱程度)と思っていた以上に安かった。
お金を支払い中に入るのだが、すでに入口から人骨でお出迎えされる。
本物の人骨で作られたアート。
奇妙ではあるが何故か僕は、その骨の並びや組み立て方に魅了されてしまった。
さらに奥に入るとどこを見ても全て骨で作られている。
これぞまさに究極のアートと言えるだろう。
拷問器具も完備されている。
一体どれほどの人が拷問がされていたのか・・・
考えただけでゾっとする・・・
シャンデリアですら全て人骨で作られていた。
これら一つ一つに人生があったと思うと何だか考え深いものがある。
この人達も生まれて友人と遊んだり、夢を追いかけたり、恋愛をしたりと人間が普通に通る道を歩んできたのだろう。
そして最後は人骨教会の一部になる・・・
言ってしまえば悪いが、僕が死んでもこんなにも人?が密集した場所に入れられるのはゴメンだ。
僕はすでに死んだ後の事も考えている。
死ぬ直前に冷凍保存されて、科学技術が進歩した未来で再び目覚め、すでに人類が住んでいる火星に行き、そこから地球をみる。
そして火星から見た地球の絵を描いて第2の人生を歩みたいと思っている。
そんな途方もない未来を想像しているので、僕は見せ物として骨だけ飾られるなんてまっぴらゴメンなのだ。
しかし、セドレツ納骨堂からは、かなりよい刺激を頂けた。
次に描く絵の構図も一瞬で思いついた。
実はもうすでに描き始めている。
海外はこのような刺激があるので、やはり旅はやめられない。
こんな事を日本でしてしまえば苦情の嵐が吹き荒れるだろう・・・
本当に旅にでて良かったと心の底から思う。
人骨教会から刺激を頂いた僕は、そのまま同じバスで再び1時間半かけてプラハに戻るのであった。
「次はどこでどんな刺激を得にいこうか?」
そんな事を思いながらプラハの夜景を見ながらビールを飲んで次の旅の事を考えるのだった。