まぶしい・・・
太陽光がまぶたを照らす。
ここはどこだろう?
寝ぼけ眼の僕はバスの窓から見た事もない朝の風景をみていた。
永遠に広がる田園地帯を朝焼けが赤く染めている。
僕はドイツのベルリンからチェコに向かっていた。
早朝6時、ベルリンにあるホテルをでて街の大きなバス停でコーヒーを飲みながら出発時間まで時間を潰していた。
新しい地にいく時は本当にワクワクする。
新しい地では必ずと言っていいほど絵の新しいインスピレーションを得る事ができるからだ。
なぜ急にチェコに向かう事にしたのかと言うと・・・
ある噂を聞いてしまったからである・・・
ベルリンの宿に泊まっている間に仲良くなった韓国人の女性と話していた。
彼女は韓国からドイツに留学にきており、英語もドイツ語もペラペラに話せる天才だ。
名前はマチルダ。
韓国の名前は覚えにくいため、韓国人は外国に行く時、ほとんどの人が英語の名前をつけている。
これまで数多くの韓国人に出会ってきたがジョン、ケビン、マイクなど、自分が好きな名前をつけて旅をしていた。
それがこの女性の場合マチルダなのだ。
そしてマチルダが僕に話してくれたチェコのある場所の話。
そこはチェコの田舎の方にある教会だという。
そして、その教会は何万本もの人骨で出来ているらしい・・・
その話を聞いたその瞬間から僕はその人骨教会に向かう事を決断したのだった。
その夜、マチルダと宿にあるレクリエーションルームでボードゲームをしながら話をしていると1人の青年がやってきた。
まさに旅人のような格好で肌は黒く日焼けしている。
それによく見ると日本人のような気がする。
このヨーロッパの旅が始まってから数ヶ月た経つのだが、一度も日本人と出くわす事がなかった。
長い間英語ばかり話していたので日本語を話してみたい衝動にかられる・・・
あの青年がもしも日本人なら久しぶりに日本語を話せると思い僕は声をかけた。
「日本人ですか?」
すると彼はふりむいて僕に「はい」と言う。
なぜか久しぶりに日本語を聞くと嬉しくなった。
「仲間が来た!」っといったような感じだろうか?
理由は自分自身でもあまりよくわからないが、とにかく嬉しい気持ちになったのだ。
彼はある目的を持って旅をしているようだ。
将来建築家になりたくて学生のうちに世界の有名な建設物を見学する旅にきているのだという。
ヨーロッパには世界的にも有名な建築家が建てた、アートのような建物が数多く存在する。
アートのような建築をする。
それはまさに芸術家への道である。
やはりいいものを作ろうと思うとまずはその道を極めた巨匠の作品を観察する所から始めるのが一番良い。
僕も世界で様々な種類の絵画を見てきたが、その理由も自分の中にない価値観を脳みそに埋め込み、そこから新しい発想を生むためでもある。
彼に共感した僕はマチルダに紹介した。
そして彼も英語でマチルダに話しかけたのだが・・・
マチルダは
「???・・・何んて言ったの???」
っと彼の英語の発音を聞き取れない。
僕は日本語英語を聞き慣れた日本人なので彼が何を伝えたいのか理解できたが、韓国人には日本語英語は全く通じなかったのだ。
英語の発音ひとつとってもこれだけ通じないものだと再確認した。
やはり日本の学校の英語の授業は本当に意味がない。
ほとんどの人が身にならないまま学校を卒業してしまう・・・
僕も学生時代は英語なんて必要ないと思っていたので、全く理解する事なく卒業してしまっていた。
韓国も同じように英語を話せない人が多いようだが、日本人の独特の日本語英語は世界でも得に通じない英語である。
しかし、そんな彼でも一人で旅ができている。
英語なんてできなくても強い目標さえ持てば不安に思うよりも先に行動できるようになるのだ。
何か目標を持って旅をすれば必ず得るものはある。
そしてその経験が人生を大きく動かす原動力になり、夢の未来の自分の姿に一歩づつ近づけるのだ。
あれをしようこれをしようと思っていても
「成功しなかったらどうしよう・・・」
っと思ってしまう人はまだまだその目標への情熱が足りないのではないかと思う。
情熱がなければ夢見た自分の姿に届くはずもない。
彼は必ず夢を叶えるだろう。
それほどの情熱を彼から感じた・・・
彼の言っている事を通訳しながらマチルダと3人でこれからの旅についてドイツビールを片手に話しをした。
ちなみにドイツのビールは一本50円ほどで買う事ができる。
それに種類も豊富。
さすがビール大国ドイツである。
僕は当然次の日の朝からチェコに行く事にしていた。
人骨教会を見てみたかったからだ。
マルチダはスマホで人骨教会の写真を見せてくれようとしたが僕は絶対に見なかった。
写真で調べれば人骨教会なんて写真はいくらでもでてくるのだろうが、僕はこの目で直接みたかったのだ。
それに僕の旅のスタイルは次にいく街の事はその街で情報調達するようにしている。
その方が旅をしている人達と出会うきっかけになるからである。
とりあえず次に向かう場所はチェコの首都プラハ。
チェコの旅はどんな旅になるのか考えただけでも楽しみでワクワクする。
今もしも海外の旅を計画しているが、勇気がでないというのであればこの世界画家旅人を読んでおいてほしい。
どんな場所なのか情報を知るだけでも不安が取り除かれると思うので。
画家を目指したいと思っているのならなおさら僕の旅を読んでそこから人生の光を見出して欲しいと思う。
PS.
ドイツの友人と会う約束もしているので少しヨーロッパを冒険した後に再びドイツに戻ってくる事になる。
そして今回のベルリンの旅で出会った友人たちもまたいつか世界のどこかで会う事になるだろう。
友人は多い方が必ず得をする。
その友人が思いがけない幸運を持ってきてくれる事もざらにあるからである。
その幸運が今の僕の画家人生に大きく影響しているのは言うまでもない。