画家として生きていくにはどうすればいいのか?
その答えを探す為、そして自分の中の世界を広げて絵に反映させる為に
大きなキャンパスと絵の具と筆を持って世界一周の旅にでた。
その旅の始まりはポルトガルのリスボンから始まった。
日本からドバイを経由して約7時間。
旅の初日で問題が発生した。
リスボンの空港に到着後、預けていた荷物を受け取る為に荷物引取りターンテーブルへ行って、僕のキャンパスと筆と絵の具、その他に必要最低限の物が入ったカバンを待っていた。
しかし、20分経っても出てこない。
カバンの中にはカメラやiPad、PCなど機械類が入っていたが、そんな物より僕はキャンパスと絵の具と筆が手元に帰ってこない事の方が問題だった。
キャンパスは折りたたみ式を日本で制作したので外国では手に入らない。
絵の具も今まで使用してきたものを使わないと同じタッチの絵を描けるかわからない。
筆にいたっては少し特殊な筆を使用してるので、海外で手に入るのか検討もつかない。
焦った僕は預け荷物管理受付に行って事の事情を話した。
受付のおばさんは何故か不機嫌そうな顔でこう言った。
「飛行機に積んだ荷物はすべて運び終えたよ」
正直その対応の悪さに腹が立ったが、そんな事より絵描き道具一式の方が重要だったため、僕は荷物引取りターンテーブルの場所へ確認しに戻った。
しかし何度確認しても何も出てこないし、もうすでに荷物を運び終えた印の赤いランプが点灯していた。
途方にくれていると黒人の警備員らしき人がどんな荷物を待っているのかを確認しにきてくれたので、日本から持ってきた荷物すべてを伝えると別室に連れていかれた。
そこには僕のカバン、キャンパス、絵の具、筆、すべての荷物が部屋の隅っこにおかれていた。
なぜかは分からないが最初からこの部屋に運ばれていたらしい。
中を確認しても盗まれたものは何一つなかった。
海外ではこういった予測できないトラブルが起こる。
この世界一周の旅ではこの先、
様々なトラブルに巻き込まれる事になるのだが、これはその最初の小さな小さなトラブルの一つにすぎない。
とにかく荷物が見つかって一安心したので電車で予約していた宿に向かった。