ケアンズの高級マンションに運良く泊まる事ができた。
ケアンズはもうすぐ正月を迎える。
正月が近づくにつれて、世界中から多くの観光客がこのケアンズにくるので宿を確保するのが困難になってくる。
そんな中僕は運よく高級マンションをレンタルする事ができた。
しかし、正月が近くなり街の宿はどこもいっぱいなのに街には人がいない。
オーストラリアは土日祝日はどこのお店も休みなので、皆どこかへ行っているようで街はまるでゾンビ映画の始まりのよう静まりかえっていた。
しかし僕の目的は絵の修行。
しかも絵の仕事を旅の初日で頂いたので、人がまわりにいなくてもやる気だけは十分だった。
ケアンズに来て1ヶ月経ったがまだ2作品しか完成していなかった。
次はパロネラパークからの依頼で描く作品の下書きを始める。
絵を描く時は基本的に下書きをしないようにしているが、依頼の絵を描く時は間違いがあってはいけないので、簡単に下書きをしてから描き始めるようにしている。
この日は下書きを描いた時点で満足してしまったので、高級マンションに戻って晩ご飯を作る事にした。
帰りにスーパーによって食材を買い、今夜の晩ご飯を何にするか考えながら歩いていると、ケアンズの街の至る所にスーパーのカートが放置されていた。
スーパーで買い物をしたお客さんが、自分の家の近くまでカートで荷物を運んでそのまま放置するようだ。
それを回収しにくるスーパーの店員の気持ちを考えると可哀想になってきた。
僕もカートで食材をマンションまで運び、一旦スーパーに戻ってカートを元の位置に戻しておこうと思ったが、面倒になったので入り口付近に放置してしまった。
申し訳ない。
マンションのキッチンでトマトチーズハンバーグをつくり、何を言っているのかわからない英語のテレビ番組を見ながらビールを飲んだ。
1ヶ月以上たってようやくケアンズの街に慣れてきた所であったが、年があけたらケアンズを出る事を決意した。
同じ場所にずっといても刺激がなくなってきてしまうからだ。
それにこの頃は、まだ画家としてどう活動すればいいのか検討もついていなかったので、新しい街に行けば何か発見できるかもしれないと思っていたからだ。
ケアンズを出る前にこの高級マンションを堪能しようと僕は毎晩プールに飛び込んで楽しんでいた。
お金持ちになった気分だ。
プールで仰向けになって浮かびながら空を見ると満点の星空がそこにある。
恐らくこの生活もあと2週間と言った所か・・・
ケアンズでは最高の出会いがあった思い出の街になった。
次はどんな出会いがあるのだろうと心を踊らせながら、冷えた体を暖めるためにシャワーを浴び眠りにつくのだった。