その昔、広大なオーストラリアの自然の中を
勇ましく生きる先住民アボリジニがいた。
彼らには文字を書いたり読んだりする習慣がない。
文字で表現したり何かを伝えるというような
人類が必ずやってきた考え方をせず、
彼らは独自の方法で自分の意思を伝えていた・・・
僕は世界43ヶ国以上を旅しながら
画家の仕事をやってきたが、
このアボリジニアートが
世界へ旅に出て初めてのアート鑑賞だった。
アボリジニの先住民族は絵で意思を伝える
アボリジニの独特の文化。
それは文字を書いたり、読んだりする習慣がなく、
彼らは絵を壁に書いて相手に伝えると言う事をしていた。
絵の中で動物や魚の食べてはいけない部分などを
しめしたり、記号を使ってブーメランは
ブーメランの形の絵、男は縦線、女はUを反対にした形
などの記号を使い人や場所、物などを表現していた。
アボリジニアートと聞けば点画のイメージだが
点画は元々アボリジニ先住民達が場所の位置、
簡単に言えば地図の役割を果たすために地面に
点を描かれていたのを現代の人間がキャンパスの
上に描くようになり、その後オーストラリア内に
広がって行く事になった。
アボリジニアートはドットを使う
アボリジニアートの特徴は何と言っても
独特の色合いをドットで描く事にある。
繊細な筆使いで多くのアーティストが
このようなドット作品を描き生計を立てている。
オーストラリアにはアボリジニアートを描く
集団までいるようだが、皆それぞれ
違うタッチのドット画を描いており、
類似する作品は一つもない。
それぞれの個性を生かす描き方。
それがドットアートなのかもしれない。
違う人間に追い出された先住民
先住民と言うだけあり元々5万年前から
オーストラリアに住んでいたアボリジニは
イギリスからやってきた人間に追い立てられ、
やがてオーストラリアは白人の文化になり
アボリジニは休息に衰退していったのだった。
街には今でもアボリジニの子孫がおり、
オーストラリアの街のあちこちで
ディジュリドゥと言う長い木でできた
筒のような形の民族楽器を使い、
筒の先から息を吹き込み、
独特の音色を奏でながら路上で
パフォーマンスをして収入を得ている。
ケアンズにあるアボリジニアート展
旅の始まりはケアンズ。
絵の修行をするためにオーストラリアへ
来たのはいいが、知り合いも友人もいない、
英語も話せない、そしてどのようにして
絵の活動をすればいいのかわからない。
そんな状況でケアンズに到着してから
とりあえず最初はケアンズにある
公園ラグーンで絵を描く事から始めた。
そんな生活が続いたある日ケアンズの街を
散歩していると「ABORIGINAL ART CENTER」
と言うアボリジニアートを描く
多くのアーティスト達がここに作品を展示している。
中に入ってみると大きなキャンパスに描かれた
アボリジニアートが並んでいた。
値段を見てみるととても手が出る値段ではなかった。
しかし僕は多くのインスピレーションを感じる事ができ、
次に僕が描く作品の大きなヒントを得る事となった。
世界を旅する画家のつぶやき
先住民アボリジニには悲しい過去や
残酷な差別など悲惨な歴史もあったせいか、
現在でもアボリジニを嫌う人も中にはいると言う。
アボリジニの血をひくだけで
差別されてしまう彼らはケアンズの
あらゆる場所でもめ事を起こしているのを
何度も見た。
実際僕もアボリジニにケンカを売られた内の一人だ。
オーストラリアの西部を車で走っていると
多くのアボリジニから石を投げられたと言う
話も聞いた事がある。
これは先住民を追い出したために増幅した
憎しみが現在まで繋がり、
この状況を生んでしまったのだ。
しかしオーストリラと言う国は仕事をしていない
人には国から生活補助金がくばられており、
何もしないで生活しているアボリジニも多い。
大昔は残酷な事もあったが、現在は
自由な暮らしをしているアボリジニも散在するようだ。