
オーストラリアでは、日本では見る事ができない様々な種類の野生動物を見る事ができる。
都会にはあまりいないが
少し離れた田舎町の草原や森に行くとカンガルーやワラビーを頻繁に見る事がある。

最初に見た時は凄い凄いと興奮していたが、あまりにも見かけるので慣れてきてしまい、あまり興味をしめさないようになっていた。
日本では道端の横でよくネコの死骸を見る事があるが、ここオーストラリアでは
道路の道端によくカンガルーやワラビーの死骸が転がっているのを目撃した。
それほど身近にいる動物なのだ。
僕はそんなオーストラリアで絵を学ぶため、画家になる方法を探すために旅をしていて思っていたより簡単にその方法を発見してしまった。
しかし、その後セカンドVSIAを手にいれるために農場で働かなければならない事に。
絵を描いて自由に生活する日々を捨ててスタンスソープという有名な農場地帯で働く事になったのだが、やりたくもない農場の仕事をしていると、どうしても休みたい日がでてきてしまう。
それはそうだ。
僕は絵を描くために、そして画家になるためにオーストラリアを旅していたのだから。
専門学校に入学した22歳の時から毎日毎日絵を描く日々を過ごしてきたので、少しでも描けない日々があると不安になってしまうのだ。
しかし、ハードワークに慣れていないためか朝から夕方まで農場で働いて、シェアハウスに帰宅するとクタクタで疲れきってすぐに寝てしまう。
そんな日々に嫌気がさした僕は
一度仕事を休んでゴールドコーストのビーチまで車を走らせ絵を描きにいく事に。
久しぶりに絵を描く事ができたので夢中になり、気がつけば夕方になっていた。
また明日は農場の仕事をしなければならない・・・
嫌で仕方なかったがセカンドVISAを手にいれる為にはどうしても3ヶ月間働かなければならない。
ゴールドコーストにあるサーファーズパラダイスのビーチの砂を触りながらそんな事を考えていた。
暗い気持ちのまま再びスタンソープへと車を走らせる事に。
あたりはしだいに真っ暗闇になり、オーストラリアの森の中にのびるハイウェイの上を音楽を聞きながら走り続けていた。
スタンソープへと続くのハイウェイは日本の高速道路とは違い、普通の道路のようなつくりになっているのでスピードは出しながらも森の中を駆け巡る感覚を味わえる。
時速80キロは出していただろうか?
このスピードだと1時間でついてしまうな・・・
時刻は夜の11時をまわっている。
スタンソープへの到着は深夜になる予定だ。
そんな事を考えながら前方を照らすヘッドライトの光を見ながら走っていた。
すると突然
ハイウェイの右側にある
森の奥から大きな物体が僕の車の前方へと飛び出してきた!
「このスピードでハンドルを切ってしまえば横転する!」
っと瞬時に判断した僕はハンドルを切らず、できるだけゆっくりブレーキをかけたのだが、飛び出してきた場所が3m手前だったので間に合わなかった。
「っドン!!」
それは車のバンパーにぶつかり、回転しながら左のフロントガラスにワンバウンドして後方に飛んでいくのを確認。
僕は一人車の中で絶叫した。
「やってもうたぁぁぁぁぁあああ!!!!」
人ではない事は理解できた。
こんな山中の真っ暗闇の中をあんなに高速で走る人間はいない。
僕はカンガルーを引いてしまったのだ。
最悪だ・・・
明日の仕事が嫌で落ち込んでいた僕の心に、罪悪感という魔物が新たに誕生した瞬間だった。
ハイウェイなので引き返す事ができないし、見るのも怖かったので、その気持ちのまま冷や汗を垂らしながらスタンスソープへと車を走らせていたが、動揺していたのか何度も道を間違え結局夜中の3時に到着した。
シェアハウスの皆は帰りが遅い僕を心配してくれていたようで、部屋の明かりをつけたまま僕の帰りを待っていてくれた。
友人にカンガルーを引いてしまったと言い、車が壊れていないか確認しようと言うので、ガレージに止めた車のバンパーを見ると毛がついていた。
皆はオーストラリアではよくある事だから気にするなと言うが、そんなに簡単に受け入れれるものではない。
僕は次の日も仕事を休んだのだった。
PS.
後にこれが原因なのかは不明だが、僕の愛車はバラバラになりこの世から消え去る事となる。
旅をしてると日本では体験しない事が頻繁に起こるようになる。
そして僕はその経験のいい事も悪い事も全てこの世界画家旅人で語り、これから画家を目指す人の道しるべをしていこうと考えているのだ。