朝日と共に目が覚めた僕は、すぐに歯磨きをして、寝癖がついた髪を朝のシャワーで流してから、カバンと絵具道具一式を持って出発した。
ゴールドコーストからバスで約1時間の場所にある楽園バイロンベイに僕は向かう。
バイロンベイに向かうバスの中でボーッと景色を見ていた。
ゴールドコーストの高層ビルが立ち並んだ景色から数分走っただけで広い草原に出る。
そしてしばらく走っていると自然ゆたかな緑の景色が広がっていく。
この自然の中にある町がバイロンベイだ。
到着してさっそく宿探しをしなければならない。
新しい町にいく時は、何も予約をしないまま旅をするスタイルなので、バイロンベイに着いてすぐに宿がありそうな方向へ歩きだした。
一件目の宿で空き部屋があったので、荷物を宿にあるロッカーに詰め込んですぐに海へと向かった。
天気も良い。
1分歩けばもうそこには海と奇麗なビーチがある。
僕は途中でポテトフライとビールを購入して海の前のビーチで食べる事にした。
何て幸せな場所なんだ。
気温も心地よい。
見た事もない鳥の奇麗な鳴き声を聴きながらさっそく絵を描く事にした。
ケアンズで絵を公園で描いている時は様々な国の人に話しかけられたが、バイロンベイではどうなのか?
どんな人が話しかけてきて、どんな出会いがあるのか?
そんな期待を胸に、楽園バイロンベイで過ごすこれからの生活を想像するだけでワクワクが止まらない。
するとさっそく男の人が話かけてきた。
名前はワンさん。
「絵描いてるの?」
と興味をしめして僕に話かけてきた。
それから数分間、のんびりした英語口調で話すワンさんと片言の英語を使って話をしていると、日本人の友達が沢山バイロンベイにいると言う。
ここバイロンベイにはキャラの強い日本人が集まってくる。
後から知った事だが、ワンさんはそんな日本人の間では有名な人物であった。
ワンさんと話しているとそこに日本人の女性3人と外国人のオジサンがやってきて一緒に話をしていた。
どうやら彼らはこのあたりのシェアハウスで共同で住んでいるらしい。
「今夜ディナーするけど家に来ない?」
と誘われたのでお邪魔する事にした。
バイロンベイに来てすぐ公園で絵を描いているだけで一つ目の出会いがあった。
この出会いの数が多ければ多い程、外国で絵の収入を得る事も可能になってくる。
一旦公園から宿に戻り、彼らのシェアハウスで待ち合わせをして初めて来たバイロンベイで初めて会う人と食事をする。
こんな出来事は日本にいては中々遭遇する機会がない。
初めてのバイロンベイのディナーは豪華なものとなった。
そのディナーで一人外国人がいたが、ほぼ何を言っているのか理解できないでいた。
この頃の僕は英語を聞き取る能力をまだ身に付いていなかったのだ。
ケアンズとゴールドコーストで外国人から逃げて日本人とばかり遊んでいた事が原因である。
なぜか日本人はどこの国に行っても集団で行動する習性がある。
このバイロンベイでも数多くの日本人と出会う事になるのだが
それが原因でまたもや英語のスキルが伸び悩む事をこの時の僕は想像もしていなかった。
そんな未来が待っている事も知らずに僕は美味しいディナーとワインの味に酔いしれた。
宿に帰る頃にはもうすでに辺りは暗くなっていて、宿に戻る道で森を通った時に空を見上げると満点の星空が輝いていた。
「あぁ・・・何て幸せな暮らしをしているんだ・・・」
この時、このような生活を一生したいと強く思った事がきっかけで自由に旅する画家になったと言っても過言ではない。
この時の強い思いによって夢が現実になったのだ。
そんな事を考えて酔っぱらっていた僕は再びビーチの前の芝生に向かって歩いていた。
バイロンベイの夜の町には路上でお金を稼ごうと世界中から集まったアーティスト達が至る所で楽器を演奏している。
そんな光景を横目に芝生の上に寝転びながら明日は何をするのか考える。
BGMは波の音。
心地よい風と潮風の香り。
平和な空気が漂っている。
この旅に来ている目的は絵の向上と絵で収入を得る方法を探すため。
しかしこの時点ではまだ公園で絵を描く事くらいしか考えつかなかった。
「活動していれば何かが起こる!」
そんな期待を持って毎日活動していると、不思議とそう言う運命に導かれていくもの。
活動をし続ける事によって、訪れるチャンスの数が増える事が原因の一つである。
しかしアーティストの町ならできるだけアーティストと一緒に活動して行きたいと考えていた。
そんな時にバイロンベイの森の近くにアーティストが集まる大きな宿がある噂を耳にした。
これは使わない手はない。
僕は明日の朝から宿をそこに移動する。
芝生の上でそんな事をずっと考えていると、だんだん気持ちよくなってきてしまいそのまま寝てしまった。
バイロンベイ初日の旅は
のんびり絵を描く
↓
豪華なディナー
↓
野宿
今日はこの3つの事をして新しい収穫を得る事もできた。
後にディナーに誘ってくれたシェアハウスの住人に、考えてもいなかった大きな絵の仕事が舞い込んでくる事になる。