朝目が覚めるといつも用意されている朝食を食べ、朝日が照らす海岸沿いを歩きにいく。
サーファーズパラダイスの朝の海は奇麗に輝き、サーファーも朝からサーフィンを楽しんでいる。
観光客も高層ビルが立ち並んでいる横の砂浜を散歩しながら、何語かわからない言語で大声で話しながら笑っていて実に楽しそうであった。
一体何キロあるんだ?と思うほどこのビーチと高層ビルの並びはずっと奥まで続いている。
僕ものんびりイヤホンで音楽を聞きながら歩いていた。
朝の海から吹く風はかなり気持ちが良く、太陽が登るにつれ気分も盛り上がってきた。
5分ほど歩いたあたりで砂を布団代わりにして気持ちよさそうに眠っている少年を発見した。
「スナ アッタラ ナンモ イラン!」と言っているようだ。
心なしか「スナイガイ ナンモ イラン!」と言っているようにも見える。
僕はそんな事を想像して笑いをこらえながら写真を撮り、一人砂に埋もれる少年を観察していた。
本当に気持ち良さそうに寝ている彼を横目に、僕は街の方へと歩きだした。
今日は僕の絵のクライアントさんのAIRIさんの家にお邪魔する事になっている。
僕の描いた絵が飾られている所を見たかったし、ペットの空ちゃん陸ちゃんを直接この目で確かめて僕の描いた絵と似ているのか確認しておきたかった。
もちろんAIRIさんとも話をしたい。
ある程度の場所は聞いていたので、その近くまで徒歩で歩く事にしたが、この当たりは超高層マンションしかない。
まさかこの家賃が高そうな高級マンションに住んでいるのだろうか?
僕の絵を一括で買えると言う事は、もしかするとお金持ちなのかもしれない。
そんな思いでAIRIさんに電話して、どのマンションなのか確認する事にした。
予想は的中し、かなりいいマンションに住んでいるようだった。
マンションの下の広場には芝生がひかれており、大型モニターで映画を見る事ができる。
クッションでリラックスして寝転がり、朝から映画を見ながらのんびりする夢の暮らしをAIRIさんは手に入れていた。
僕もこの時このような生活を手にいれてみたいと強く願っていた。
今では好きな時に旅に出て、好きな時に旅の記録を更新し、好きな時に絵を描き、好きな時にご飯を食べる。
そんな暮らしをしているが、この時はまだ絵でお金を稼ぐ方法すら知らずにAIRIさんの豪華な生活を羨ましく思っていた。
AIRIさんが一回まで迎えに来てくれて、そのまま家にお邪魔する事となった。
そこには写真でしか見た事のなかった空ちゃんと陸ちゃんがいた。
どうだろうか?
僕なりにどうにか似せようと思い、必死に特徴をつかんで描いたのだが自分が見る絵と他人から見る絵では感じ方が違う。
僕は似せる事ができたと確信したので原画を売る事にしたのだが。
AIRIさんに聞くと似ていると言ってくれたので一安心している。
やはりペットを描くのは難しい。
ペットはその飼い主にしか特徴がわかりずらい事もあり、動物を描く依頼はこれが最後となっている。
現在は世界にいる5人のクライアントさんにしか原画を販売しないようにしているが、AIRIさんはその内の一人である。
鳥のゲージの横に僕の絵を飾ってくれているようだ。
やはり自分で描いた絵を人の家に飾ってもらえている所を直に見ると、嬉しさがこみ上げてくる。
日本では大きな絵を飾るほどのスペースがある家はそれほどないが、ここオーストラリアでは日本よりも大きな家の方が多く、さらに日本人よりも絵に対する価値観が違うため、画家はオーストラリアに行く方が絵で生きる可能性が広がると確信した。
AIRIさんは、このまま仕事に行かなければならなかったので、家の中で少しのんびりしてから一回の広場の芝生あたりで絵を描く事にした。
これはケアンズに滞在していた時に、日本人が多く訪れるNaviツアーと言う会社のケンさんとヨウコさんにパロネラパークにつれていってもらい、そこのオーナーに気に入られて仕事の依頼を頂いた作品の1枚である。
まだ完成していなかったので映画を見ながら柔らかいソファーにに腰掛け、絵を描いていた。
すると、そこに白い服をまとった、いかにもアラブの石油王といった感じの男に話かけられた。
僕は絵の修行をするためにオーストラリアを旅している事と、ここにクライアントさんがいるのでお邪魔していると説明した。
すると彼は突然この絵をいくらで売ってくれる?と言いだした。
しかしこの絵はパロネラパークのオーナーから依頼されたものなので売る事はできない。
自分でも高すぎると思う値段を言って諦めてもらおうとしたが、二言返事でもしよかったら売って欲しいと頼まれた。
オーナーに聞かなければわからないと言うと、連絡先を紙に書いて僕に渡してその場を彼は去っていった。
以前にも像の絵を売った時に高い値段を言って断ろうと思っていたが、簡単に承諾された事があった。
やはりお金持ちからすれば僕が思う
「高い金額」
はそれほど高くないのかもしれない。
この時から僕は絵の値段を今までよりもさらに高額に設定した瞬間でもあった。
夜になりAIRIさんが仕事から戻ってきたので、一緒にゴールドコーストにあるカジノに行く事になった。
カジノには誰かが描いたカッコイイ絵が飾られていた。
以前ケアンズのカジノで勝ちに勝った経験から絶対に勝てると言う自信があった。
その時の記事がこちら。
ケアンズのカジノで勝ちすぎた経験談
僕のやり方はとりあえず20$を2倍に賭けて少しづつ金額を増やしていく方法。
5分後・・・
お金はなくなっていた。
やはりケアンズのカジノは相性がよかったのか、あの時のように何度もそう上手くはいかなかった。
カジノでは負けたが楽しい一日であった。
それにゴールドコーストでAIRIさんと会う目的も果たされたので、いよいよ明日からアーティストが集まる街バイロンベイに向かう事にした。